インコネル718積層造形品の応力

◆金属製品の応力について

金属製品の製造や加工時には、さまざまな応力が発生します。加工時の応力、溶接時の応力、熱応力などが一般的に聞かれるものです。また、引張応力や圧縮応力という用語もよく登場します。またX線を使った応力測定も現実に行われております。

応力について視覚化できることがありましたので、技術ブログとして共有したいと思います。
今回使用した素材はインコネル718の積層造形品です。

◆インコネル718とは

インコネル718はニッケルを多く含む非常に高価な材料で、その性能は高温域で特に優れています。
しかし、加工が非常に難しい超難削材とも呼ばれ、加工にかかる工具代も非常にかさみます。
このため、積層造形によるメリットが大きい材料の一つと言われています。

積層造形品は、金属を溶かして層を重ねる溶接のような方法で製造されるため、内部に応力が蓄積されます。
通常インコネル718の積層造形品には熱処理を施します。
具体的には、固溶化処理と時効硬化処理が行われます。

【上】インコネル718の熱処理前
【下】インコネル718の熱処理後

 

◆実験結果の比較

ここで、「百聞は一見に如かず」ということで、実際に熱処理前と熱処理後のインコネル718の積層造形品をワイヤーカットしてみました。
これは、クリープ試験のための試験片を採取するために行ったものです。

1. 熱処理前のものは、ワイヤーカット後にすぐに反りが見られました。これは、積層造形品が製造時に蓄積した応力が、カット後に自由に動けるようになった結果です。
2. 一方、適切な熱処理を施した積層造形品には、大きな反りは見られませんでした。

◆結論

今回の実験を通じて、インコネル718の積層造形品における応力の存在を視覚化することができました。
また熱処理を適切に行うことで、内部応力を低減し、加工後の変形を防ぐことが可能です。
高価で加工が難しい材料であるインコネル718においても、熱処理の効果は非常に大きいことが分かると思います。

弊社では神奈川県・静岡県・岩手県に拠点がありインコネル718の熱処理に臨機応変に対応できる体制を整えております。

 

更新:2024年06月25日